小説「ヒトからの贈り物」part2.5
少年の住まう街で奇妙な事件が多発している。
ここ数日、夜な夜な人が殺されるのだ。
殺し方は多岐に渡り撲殺刺殺銃殺毒殺絞殺格殺斬殺圧殺殴殺薬殺抉殺撃殺など様々であるがどれも一様に
現場に必ず「ヒトからの贈り物」という『メッセージ』が残されている。
その『メッセージ』はどの現場でも被害者の血液で書かれてはいるのだが、
筆跡が全て一緒なため同一人物の犯行と見られている。
現場に残された『メッセージ』から犯人は「ヒト」と呼ばれるようになっていき人々に恐れられた。
ヒトが人を初めて殺したのは単なる偶然だった。
偶然に偶然が重なり「偶然」人を殺した、只それだけの事であった。
ーーー人間は脆く、儚い。
勝手に希望を掲げ裏切られ、絶望する。
人間は簡単に変わるさ
たった一人のヒトを変えるのには「人を殺す事」なんて十分すぎる引き金(トリガー)じゃないか
初めて手を紅に染めた。
その時は恐怖しか生まれなかった。
怖い怖い怖い怖い恐い恐い恐い恐いこわいこわいこわいこわい
コ ワ イ
心を恐怖に染められる、心を恐怖で塗りあげられる、心を恐怖に支配される。そんな感覚だ
怖い恐いコワイ
ヒトはその場に踞(うずくま)り何も言わず急激な吐き気が催(もよお)された。
ヒトは自分が解らなかった。
己という存在に疑問を浮かべ答を求めていた。
不安、焦り、焦燥、そんなものは頭の中になかった。
頭に浮かぶのは只の疑問符、自分に対しての疑問符だけだ。
「何故自分という存在が在るのだろうか」
問うても答えは返ってこない
サイレンが泣き叫び街がざわついた頃ヒトは気付いた
普通の人間とは違い自らの高すぎる身体能力と思考回路、
『自分はバケモノなのだ』
と、『バケモノ』はひどい吐き気と頭痛の中その場から姿を消した。