音々♪の本棚

音々♪が小説の内容について記事を書いていきます。 更新頻度はまちまちです。

小説「リミット彼氏」 Part3

 

 

朝、何ともなくパチリと目が覚めた。

視野に入ったのは綺麗で鮮やかな白

其処に広がるのは白一色だけだった。

 

少年はごそごそと布団の中に蹲(うずくま)りつつ感じたのは強烈な違和感。

(あぁ、そうか此処は病院なのか。)

そう思った刹那、扉が開いた。

何か心当たりがあるわけもなく呆然としていたら

扉を開いた張本人が口を開いた。

「おはようございます

 いや、はじめましての方が良いのかしら?

 私は貴方…優人くんの担当になった看護婦です。

 短い間になると良いのですがこれからよろしくお願いしますね」

看護婦の自己紹介に違和感を覚えたが

あえて突っ込む必要もないと判断して

「あぁ…はい、こちらこそよろしくお願いします…」

と情けない声が零(こぼ)れた。

 

俺が目を覚ました事を何故知っているのか?と

その時は思ったが後から聞いた話、俺が目を覚ました日に

サユが帰る前にナースセンターに伝えてくれていたそうな。

ならその日のうちに来ればいいのではとも思ったが

その人が来たときにはもう俺が寝付いた後だったらしく

どれだけ話しかけても死んだように目を覚まさなかったし

起こしてしまっても悪いと思ったらしくこのタイミングになってしまったらしい。

余談だがこの看護婦さんは初めて担当を任されたのが俺らしい

 

その後看護婦さんは朝食を持ってきてくれた、

「病院の朝食は普通のご飯より味気ないと思いますが我慢して下さいね」

「あ、はい。有り難うございます…」

そういって雑炊みたいなご飯を喉に通した。

そうすると唐突に看護婦さんが

「……それにしてもあの女の子良い彼女さんですね」

などと言うから俺は口の中に入っていたご飯で噎(む)せた

「んな!!??なんで桜由のことを…!?」

これはヤバい、ご飯が気管に入ったかもしれない

「えっ?優人くんが倒れた日には泣きじゃくりながら

 病院まで付き添ってくれて、しかもその日は次の日になるまで

 ずっと付き添っていてくれたのよ、

 さらに倒れた次の日から毎日毎日お見舞いに来ていたので…

 彼女さんじゃないんですか…?」

戸惑いながら新人のような素振りを見せつつ尋ねた。

「そう…ですけど///」

さっきまで何ともなかったのにその言葉を呟いた瞬間耳まで熱くなった。

「そういえば!! 今日って何日ですか?」

突然話題を少しでも変えようと大声になってしまったらしく

看護婦さんが一瞬びくついたが丁寧に答えてくれた。

「今日は…確か11月30日だった筈よ?」

即座に少年の頭が働いた

(俺が倒れたのが確か10月30日だったはずだから…)

「俺が倒れてから1ヶ月!?」

「えぇ…そうよ?」

(俺が倒れてから1ヶ月もずっと毎日毎日サユは見舞いに来てくれていたのか…)

戸惑いながら少年は呟く

「……教えて下さって有り難うございました。」

「あ、そういえば敬語なんて使わなくて良いわよ?

 正直あんまり年は変わらないし…

 さらに1ヶ月もずっと意識がなかったんだし

 この病院の事もあんまり解らないでしょ、

 解らない事とかがあったら遠慮無く聞いてね!」

「はい……あ、うん……」

(元気な人だな…)

それがこの人に対しての第一印象だった。