小説「リミット彼氏」 Part5
暫(しばら)く嵐が過ぎ去っていたような
虚無感に包まれていたが実際の時間では5分程度であった
体感時間で数十分ほどその場で立ちつくしていた。
呆(ほう)けた状態からハッと意識が覚醒し切っていない状態で少年は呟く
「今度こそ散歩へ行こう」
答える者は誰も居ない
~病院内の庭園~
「ここの病院ってこんなに広かったんだ」
優人は病気にはほとんど無縁で病院なんぞ来たことがなかった
あえて来たことがあると言っても予防接種やらなんやらだけだ
「こんなに綺麗な庭園があるなんて知らなかったな…」
暫く散策しているうちに広場に付いていた。
だが、身体にはこれまでとは違う疲れが溜まっていた。
「1ヶ月も寝っぱなしだったんじゃ身体も鈍(なま)って当然か…」
優人は運動部ではなかったがそれなりに身体は動かしていたので
運動神経は結構良い方だった
優人は少し休憩するべく側にあったベンチに腰掛けた
少年が一息つくところころと何処からともなくボールが転がってきた
(…サッカーボール?)
何故ここにと疑問に思いながらボールを拾い上げると
「すいませ~ん!そのボール僕のなんです…!!」
と最後は口ごもりながら言う
小学生から中学生くらいの少年の声が優人の耳に届いた
「あ…」
(あの子のボールなのか…)
「よっと」
優人がボールをその子の方へぽーんと放ると
ボールが少年の手に吸い込まれていった
「お兄さん有り難うございます!!」
という声が優人の耳に入りニコッと笑顔で
「どういたしましてー!」
と答えた。
(よく見たらここは結構いろんな人で溢(あふ)れかえっているな…
意識してなかったからそう見えるだけか?)
そう思いつつベンチで休んだ後(のち)少年は
「そろそろ部屋に戻ろうか…」
と呟いて部屋に戻っていった。